Misce//anea

小手先のLife Hackではなく、器の中身を。

学生とマリファナ

僕はこの夏、UCBに1semester分留学した。

光陰矢のごとしということわざがあるが、Berkeleyでの二ヶ月間は矢のごとく一瞬のようにも感じられたし、二ヶ月という数字の実感の割に長く感じられた。

時間は相対的である。

グリニッジ標準時を基準として日本とアメリカに時差があるように、僕らにも相対的な時差がある。いや、正確には時間の密度ともいうべきだろうか。ともかく、ここでの生活は全く別の時間軸にそっているようであった。

 

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 バークレイという大学はありとあらゆる意味で先進的である。そもそもこの町自体が先進的であるから驚きである。*1

殊に顕著なのがゴミの分別である。通常アメリカでは字義通りゴミはゴミであり、それ以上の区別は存在しないのだが、ここバークレイでは3つに分かれている。二ヶ月の間に幾度どなく様々な友人にゴミの分別について聞き、その度に熱心にどのゴミがどこへ区別されその訳はこうこうだと教えてくれたものだが、既に記憶の彼方である。とにかく、意外と分別を守ることを心がけているようだ。

 

風情

アメリカの大学は規模が違う。寡聞にして、僕は東大の本郷キャンパスがどれくらい大きいのかしらないが、在学中バークレイは東大の3倍くらいの大きさだと勝手に決めつけ、その大きさと戦っていた。ちなみに、南側に位置する僕のアパートメントから、キャンパスの北側に位置するSodaホールまで早歩きで15分というところである。朝は余裕を持って寮を出ないといけない。ロードバイクスケートボードを相棒とする学生が多いのもこのためであろう。

レギュラーセメスターで数万人を収容するこのキャンパスは、Unitをはじめとする学生寮やアパートメントに囲まれている。そのため、バークレイ自体は殆ど学生の街といっても過言ではない。ダウンタウンに少し足を伸ばしても、Calマークのパーカーを着た学生に遭遇する。

 

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バークレイという街

バークレイ自体、治安が良いというかとかなり懐疑的にならざるをえない。隣接するオークランドが全米で5本の指に入るほど危険な街であるということもあるのか、道はホームレスが多く、タバコを吸っている人と同じくらい路上でマリファナを吸っている人が多い。その為、殆ど実害は無いものの、ハイになった人に絡まれたり、大声で叫び出して人を驚かすから大変である。

一度キャンパス内を友人と歩いていると「マリファナいるか?」と声をかけられたことがある。普通なら無視すれば良いものの、二言三言交わしていらんという意志を伝えた友人に何故無視しないのかと聞いたところ、「無視して逆上したら良くないだろう」ということであった。なるほど、よくよく思い返してみると、こっちでは店での世間話は当たり前で、道端のホームレスやバスで隣に座った人とも平気で話しはじめる人が多い。多様性のなかで見知らぬ人とコミュニケーションを取ることになれているのだ。コミュニケーションを拒絶することは失礼なのだろう、と一人勝手に納得したものだった。

 学生とマリファナ

話を戻そう。ご存知の人もいるかもしれないが、アメリカは州によって法律が異なり、カリフォルニア州はそのなかでもマリファナを半合法化している数少ない州である。是非は脇に置いておくとして、眠れないだとか頭が痛いだとか割と当てにならない症状で、医者からマリファナの処方箋がでるというのだから驚きだ。したがって、ホームレスだけではなく学生の間でも蔓延しているのが実情である。 

一度だけマリファナに最も近づいたことがある。たしか、セッションの最初のころだったと思うが、その頃はとにかく新しい出会いに事足りず、授業も楽についていけたため、パーティやらなにやらが多かった時期である。友人の一人が、ホームパーティーでガラス製の実験器具と思しきものを取り出したのがことの始まりである。所謂マリファナと言っても吸引方法は様々で、こいつは抽出したマリファナをグリス状にして、それを熱で気化させ蒸気とともに吸い込むという代物であった。ご想像の通り威力は通常の数十倍である。おいおい、とは思ったものの、得意気に語る友人が勧めてくるということは無く、あくまで自分たちで楽しむという様子だったので、グレーな法律と好奇心を天秤にかけて、ことの成り行きを見守ろうとしたのである。

器具の扱いに慣れると、吸引方法も様になるのか、まるで映画のワンシーンのようである。吸引してしばらくすると、僕の友人の一人に異変が起きた。彼は英語聞き取り試験のように早口で喋り始めた。つまりハイになってしまったのである。見てるこっちとしては、全く滑稽なものでしか無かったのだが、さらに不気味なことに、今度は極端にゆっくり喋り始めた。どうも本人には自覚が無いようらしい。ともあれ、彼はハイな状態から多大なインスピレーションを得ているらしく、とても満足気であった。

彼らがいうには、マリファナはタバコに比べるとガンになる可能性が少なく、中毒性もカフェインより少ないらしい。僕には喫煙歴と日々コーヒを飲む習慣があるが、どうも肌感覚でマリファナの害が少ないとはあまり思えなかった。ともあれ、僕にとって未知なる領域を垣間見た瞬間であった。 

ところ変われば空気も変わる

ところ変われば空気も変わる。その土地に染み付いた文化を吸い上げて、空気は独特の重みを持つ。がむしゃらに勉強して、少し大雑把に生きて、違いを尊重する。少しマリファナの匂いはするかもしれないが、そんな空気がとても気持ちのよいものに感じられた。

*1:詳しくはWikipediaに載っているので興味がある方は是非調べていただきたい。